TERRA EXTRANJERA


                                                          

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2009


TERRA EXTRANJERA
























ひかり祭り

                         2007年夏の終わり


       廃校になった小学校を鮮やかな光や映像で飾る「ひかり祭り」で披露された映画


                         『The book of light』


               SOMEONE’S GARDEN製作、Le film clandestin監督


    ニコラ・フォルミケッティがプロデュースするセレクトショップ「Side by Side」の全面協力によって


                  全く新しいファッション・フィルムが姿を現した。


           闇の中で光る1冊の「光の本」、それをめくるところから物語は始まり


               やがて読んでいる少女の現実と虚構が錯綜していく…


    古くはロヴェルト・ヴィーネの『カリガリ博士』からウディ・アレンの『カイロの紫のバラ』まで




主人公を軸として内と外の世界が交錯するという手法の語り口がある。


    それが成立するには、奇術やスクリ-ンなど各々の世界のエントランスとなるアイコンの存在と


        白昼夢や妄想など主人公が夢想的な精神状態にあることが必須条件である。


           本作『The book of light』にとってそれは「光の本」がエントランスであり


             また少女が見る「夢」が観客を夢想的に導く役割を果たしている。


            2007年8月11日、神奈川県の山中奥深くに存在する「牧郷ラボ」に


             SOMEONE’S GARDEN + Le fim clandestinクルーは到着した。


                  廃校となった小学校の木造校舎を改造し


       今は多数のアーティストが所属するアート・レジデンスとなっているこの場所では


     毎年夏の終わりに『ひかり祭り』 という光と映像で校舎を彩るサマーフェスが開催されている。


    かつてUAなど大物アーティストも参加したこのイベントに今回参加することになった同クルーは


                ここを舞台に『The book of light』の撮影を決行。


     カメラは「ローリング・ストーンズ」誌イタリア版を始めとするカルチャー誌で異彩を放っている


                         ロレンツォ・バラッシ


           主演には数々のファッション誌で活躍中のmika yoshinagaを迎えた。


            mikaが見る夢をロレンツォがキャッチし、紡ぎだしていく作業は


             その日の昼11:00から夜中の11:00まで休むことなく続いた。


               そして8月末日、牧郷ラボで開催された「ひかり祭り」。


                    夜もとっぷり更けた頃に漆黒の体育館で


       生音舞踏パフォーマンス×『The book of light』上映のインスタレーションが催された。


      


闇の中より登場する主人公mika。


         彼女の意思で本をめくることにより彼女自身のストーリーが始まって行く。


     そしてそのスクリーンの前で蠢くダンサーたち。観客たちは彼らが乗り移った様な錯覚を覚え


                  夢想的な「光の本」の世界に引き込まれていった。

le film clandestin

Un livre de la lumiere

                  初めから其処に置いてあったようにも感じ


      それはまるでお菓子の箱の中にあったようで、子供の頃に見た懐かしい記憶を思わせる


                           『 光の本 』


             この本はページをめくるごとに光を放ち暗闇の中を照らすのだ。


                  


                             そして


       この本を読む者は藪睨みな視線で、本に書かれている事に引き込まれるだろう。


                         何故ならこの本には


              貴方にしか読めない光の文字で全てが書かれているから・・・ 


                               PS


                      実は今週末から撮影なんです。


                         あと残すところ二日間


         スタッフ共々『雨にも負けず、風にも負けず、夏の暑さにも負けず・・・』の勢いで


                       撮影に挑みたいと思います。


                                                      le film clandestin

歪な、あまりに歪な・・・

                 物事に溺れながら、虚構の世界に身を潜み込み


                       異食症という悩みを抱く君。


    人間は僕を必要な為に創り出したけど、存在不要となってしまったら何処かに捨ててしまって


         気がつくと古道具屋の片隅で誇りまみれになっている僕を、君は見つけてくれて


                           『 遊ぼうよ 』


                 っと竹の葉が擦れるような声で囁いてくれたね。


                  


                        僕にとってその日以来


             いつも君の悩める姿を、部屋の片隅で見つめていたから


                      君のことは全て知っているよ。


                             だけど


                 君が僕に気づいてくれた事に対して正直言って


             嬉しさと恥ずかしさのあまりに、最初は様子を窺っていたけど


                     この事だけは自覚しているんだ。


                    人間の創り出した物である僕の使命


                             それは


                   少しでも君の苦しみを癒すことなんだ・・・


                            ってな感じで


          我々le film clandestin は映像制作という名の大気圏に突入しようとしています。


                 上記の画像は、今日見つけたその小道具たちです。


             この小道具達がどのようなドラマを創りだすかは後日更新して行きます。


                                                      le film clandestin 

moi un noir

         昨日のイベントも無事に終了。


          いや~、気が付いたら日本はすっかり金鳥の夏を迎えましたね。

  

       そう言えば今回は『モードの夜』に来てくれた方々どうもありがとうございます。


             イベントの趣旨を旨く伝えられなかった点もありますが


我々も反省点を活かし、これからも色々試行錯誤で映画難民が集える空間作りを心がけて行こうと思います。


「モード」と「映画」、この2つのベクトルが融合した映画『モード・イン・フランス』は


         その壮大な2ジャンルを妥協することなく表現しようとしたため観客に混乱が生じ


         公開当時は「B級のSF映画」(SFでもないのですが…)とも評価されたのですが


      最近になってNYやパリの美術館などで上映されるなど再評価を受けたいわくつきの作品。


                        楽しんで頂けたなら幸いです。


           さて、突然ですが次回のテーマが仲間内で殴り合いの末に決定しました。


                        テーマは映像人類学!!


                             


                        さて、映像人類学とは?!


      映像の世紀が切り開いた真新しい学問の分野であり、民俗学とは趣向を凝らしたもの。


           具体的に判りやすく伝えると映像人類学とは:1910年代より発達した


               秘境の地を紙とペンではなく、映像で記録する研究です。


                     つまり、ドキュメンタリーの事なのです。


           その世界でもまだ真新しい分野の一つで、世界的に署名な学者とは・・・


                 ヌーヴェル・ヴァーグ運動が発生した1950代後半


            J・LゴダールやF・トリュフォーなどに影響を与えた同時代の監督。


                        その名はジャン・ルーシュ


                    


  知っておられる方もいるだろうが、『パリところどころ』というパリを舞台にしたオムニパス形式の映画


    北駅編の監督として参加しています。余談ですが僕は個人的にこの北駅編がお気に入り。



                

      話が脱線してしまいましたが、本来の分野である映像人類学にクローズアップしてみると


          アフリカのガーナの若者の間で流行った「Hauka」という儀式を記録した


        「狂気の主人公たち(Maître Fous)」(1954年、上映時間:28分)は、必見です!


        


  これはイギリスの植民地下にあったガーナで、自分たちの国家を“擬似”再建国するために行った


精神的な宗教儀式で、ある者は軍隊の大尉や女王に、またある者は警察官や町民になりきり


                トランスする…という一見かなり危ない光景です(苦笑)


           しかし、ジャン・ルーシュ監督は残念なことに2004年に亡くなりました。


           しかも監督の記録した「ある夏の記録」「我は黒人」などの数々の遺作も


      日本では小規模で公開されたものの、日本語字幕でのDVD作成は殆どされておらず


              著作権の関係上、日本での公開は難しいとのことです。


         なので我々は次回の企画にジャン・ルーシュに師事していた唯一の日本人


           国立民族学博物館名誉教授、大森康弘氏をゲストとして招いて


     ジャン・ルーシュ監督についてや映像人類学のついてなどを語ってもらいたいと思い


                        大森教授と交渉中。


              状況は随時このBLOGにup して行きたいと思います。


               なんか今回は変にお堅い感じの文章になりましたが


       それは夏の暑さのせいや、変な物を食べたからではないのでなのであしからず・・・


le film clandestin 

                        

La nuit du mode

le film clandestin / someone's garden presents

                     7/28(土)、外苑前のカフェ「flaneur」にて


               Someone's Gardenのvol.2「ファッション特集号」を記念して


           我がle film clandestinでは"モード"をテーマにした上映会を企画します。


                     是非、皆さまお暇つくって寄ってください!!

          今回は未だ絶大な人気を誇るファッション写真家ウィリアム・クライン作品


                         『モード・イン・フランス』


                               も


                            特別上映!!

                       


      80'のモード会に蠢くグラン・デザイナーがフェミナンの為に創り出す幾何学的な造形美。


                     それを着こなすマヌカン達。


            まさにその光景はフェミナンだらけの大運動会とでも言うべきか?!


           また、それに群がるファッション中毒者たちを独特のエスプリで描きます。




 NYのアーティスト集団「Avant16」とオランダのアーティストボゴミール・ドリンゲールが紡ぎだす


ファッションと映画の枠を超えたアダムとイヴの物語『DERANGER』


       また映画やファッションを含めた全てのカルチャーを融合したDVDマガジン「FLY」より


                  『WORDS REMEMBERED』を日本初公開いたします。

                 ご予約も承っておりますので、下記までご連絡ください。


                             【イベント詳細】

 
                   タイトル/le film clandestin上映会vol.3「モードの夜」

                           開 催 日/2007年7月28日

                           時   間/18:00~  開場 

                             18:30~20:30  上映

                         料  金/¥1,500   (1drink付き)

                お申込方法/film@someonesgarden.com までご連絡ください。

       
                    ※定員に満たない場合、若干当日券もございます。

                                【上映作品】

                               「DERANGER」

               (2007年/Bogomir Doringer+AVANT16/オランダ+アメリカ/3分)

                「WORDS REMEMBERED / from FLY -CONSCIOUS DREAM」
         

                          (2007年/FLY/アメリカ/3分)

                              「モード・イン・フランス」

                     (1985年/ウィリアム・クライン/フランス/84分)


                  お問合せ先/SOMEONE'S GARDEN tel.03-5647-6955
      

                         担当:津留崎麻子 tel.090-6180-3303

                              会  場/cafe flaneur 

                     東京都渋谷区神宮前3-41-3 tel.03-3796-8200

                              http://www.flaneur.co.jp/
                                                       le film clandestin  


東京フラヌール

                            前回の続きより・・・


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~        


               それは線香花火が火花の放物線を描きながらスパークするように


                      ページを捲ったと言ったらよいだろうか。


            作品の世界観に浸れる瞬間とは僕にとって例えるならこの様な心境なのだ


                     


             彼のスケッチする東京は、我々日本人が日常に見る東京の断片であり


                     台詞や色彩がとても生気を帯びている。


          きっとボワレ氏は現実世界を凝視した傍観者的視点で物事を観察しているのだろう。


          また、異邦人のフィルターを通して描かれた東京がとても磨りガラス越しに見えるので


                我々日本人の日常の風俗、習慣、特性を再認識した。



          


           彼の描く世界観が現実だと思えたら、現実も結構悪くないものだと思ったりもした。


                 僕の知っている限りの従来BD作家と比較してみると


           どうしてもビジュアル重視のデッサンとSF的なスペクタクルを抱かせるのだが


            ボワレ氏の視点は普偏性であり、日常を非スペクタクルとして描いている。


                 それは外的世界と内的世界の温度差なのだろうか?


 僕の好みからすると後者だろう。だから、漫画を読むということを意識せずに淡々とページを捲れるのだろう。


                   そう言えば、この経験は以前にも経験した事がある。


        僕の愛読する日本の漫画家だと、つげ義春氏と同類の感性の持ち主なのだろう。


                      リアリズムとリリシズムを抱かせる作品。


           


   それに言い付け加えると、なんと例えたらよいか旨く伝えられないが異邦人の視線が東京と言う都市に


                    浮遊感を抱かせるとでも言うべきだろうか。


           映画に例えるならS・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』のように…


                    


         それにもう一つ付け加えると、フランス映画の系譜を感じさせるからではないだろうか。


         それは、また別の言葉で表現すると『自然作家主義』と言ってもいいのだろうか。


      僕が連想するフランス映画だとヌーベル・バーグの頃だったら E・ロメール監督の作品群だろう。


        『六つの教訓的物語』6本、『喜劇とことわざ』、6本『四季の物語』4本などが代表作だ。


         個人的には『緑の閃光』、『夏物語』、『モンソーのパン屋の娘』がお気に入りだが


             F・ボアレ氏の作品は『モード家の一夜』が伝わりやすいだろうか。



     
                     
 


   恋人同士または男と女の些細な会話などは正にF・ボアレ氏のヌーベル漫画から正に感じ取れる一面だ。


         ちなみにヌーベル・バーグ以降だとS・クラピッシュ監督の『猫が行方不明』だろうか。


           多少、喜劇的要素が強すぎるが作品のモチーフとしては日常の些細な出来事。


    そう言えばF・ボアレ氏の『恋愛漫画が出来るまで』に付属している『DEMI-TOUR(半分旅行)』などは


                     映画のシナリオとして完成度が高い。


           その内容はと言うと、ある男と女の『偶然の一致』をテーマに物語は語られる。


          これがまた面白い構成で、一つの漫画に二つの時間軸を交差した実験的な作品。


                       その様にして氏の作品を読むと


         特に僕のような映画狂にとっては一つのフランス映画を見終わった気分に浸らせる。


              それはとても僕の中で心地の良いワルツを聴くようなものである。


         だから、こんなにも自分にフィットする漫画。正しくはヌーベル漫画なのだろう。


              まだ、この2冊しか知らないが他の作品も読んでみたい。


            それは、また僕に新たな趣味が一つ増えたことを意味していた。


   気が付けば時刻はAM7:55を差している。いい加減こんな不規則な生活を本当は直したいのだが…


        カーテンの隙間からは、青味を帯びた光が慎ましく埃っぽい部屋に差し込んでいる。


                   埃は煌めきを帯びながら静かに舞っていた。


          そう言えば気が付かなかったが、振り子時計が数回時を告げていたようだ。


                    『眼も霞んできたので床に就こうか』


           そんな思いに駆られながら草臥れたソファーに草臥れた体を沈めた。


              しばらくする内に夢の中で僕はしみったれたの酒場にいた。


           カウンター越しに隣では白髪に髭を蓄えた老人が麦酒を煽っていた。


     何処かで見覚えのある顔だった。あれは誰かの小説の著者の肖像写真だったような?!


          すると、老人は麦酒の杯を煽りながら僕に細々とした英語でこう呟いた。


          『"Truth is more of a stranger than fiction."(真実は小説より奇なり)』と…


                                                       Monde

  

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~   


                              告知


      この度フレデリック・ボワレさんをゲストとしてお呼びするトークショー&映画上映会を開催!!

                            2/24(土)
                  le film clandestin上映会「東京 フラヌール」
                          16:00~上映会
               上映作品:「モード家の一夜」(エリック・ロメール監督)
                         ※DVD・日本語字幕付き
                          18:00~トークショー
                ゲスト:フレデリック・ボワレ  http://www.boilet.net/
                           料金:¥2,000
                ※上映会+トークショー+1drink込のお値段です
                  会場:cafe flaneur  http://www.flaneur.co.jp/
                 東京都渋谷区神宮前3-41-3/03-3796-8200

                   メールマガジン:film@someonesgarden.com
                          

       同日発行するフリーマガジン「someone's gaden」にもボワレさんのインタビュー掲載します。


       とっても気さくな良い方でした。ぜひご興味のある方はご連絡ください!!


                                                      le film clandestin                                                                                             

午前5時のフレデリック・ボワレ考

                            AM 5:05

                   室内を振り子時計が刻々と時を告げるなか

  僕は白灯ランプの篝火が照らす埃まみれの薄暗い自室で 一冊のヌーベル漫画を片手に読み耽っていた。

                  何故そんな時間に?


まあ兎に角、事の発端はこの様な訳なのだ。

            普段、漫画を余り読まない僕に或る友人が薦めてくれた一冊である。

           断っておくが、別に漫画を軽蔑している訳ではない事を付け加えておきたい。

              何故かと言うと、僕の物事の優先順位は映画から始まるからだ。

          要は好みの問題である。漫画まで手をつけるには余りにも時間が足りない。

      話を戻すが、今回Le film clandestinと言う映像集団主催のビデオ上映会のゲスト候補に

 フランス人のBD作家(バンド・デシネ)フレデリック・ボアレ 氏と言う東京在住のヌーベル漫画家が挙がった為


                 友人が所有している作品を読むという訳なのだ。


              余談だが友人はフレデリック・ボアレ氏のコレクターでもある。


                   

                   そんな訳で今回の記事を書く資料の為に

    真夜中の二時に友人の家まで自転車で全力疾走で飛ばしてまで手にした二冊のヌーベル漫画。



                   
      


              一冊は『恋愛漫画が出来るまで』フレデリック・ボアレ短編集。


          もう一冊はjapan×france manga collectionに掲載の『アモール商店街』


  まず、手始めに『恋愛漫画が出来るまで』を手に取り、座り心地の悪いソファーに 腰を下ろしながら

                    当たり前のように右開きで読んでみた。

ページを捲り、三ページ目に『une belle manga d’amour』とタイトルが記入してある 或る一面で手が止まった。

        そこには『Alain delon cigarettes』の看板越しに一人のアジア人女性が描かれていた。


                    

               顔付きから見て 東南アジア系の顔立ちをした少女だろうか?

気になりながらそのままページを捲ると東京の町並みや、普段我々がよく見る写実的な光景が描かれている。

                『今日こそ恋しなければ今日こそ…でも誰に?』

        この一文を気に僕はフレデリック・ボアレ氏の世界観に自然と足を踏み入れていた。

           その時の心境を何かに例えるなら、線香花火に火を付けた瞬間だろうか?

    そんな事を思いながら 好奇心に駆られページを捲ると、或るページでまた手が止まった。

                 冒頭の東南アジア系の少女の正体が判ったのだ。

            『カンボジアのプノンペンでタバコを売るクメール人の少女』だった。

       主人公(ボアレ氏自身?!)がカンボジアを題材にした旅行記の漫画の資料であった。

               非常に凝った冒頭の演出に思わず顔が微笑んでしまった。


          きっと、このヌーベル漫画を書店などで立ち読みしていたら第三者にとって


                   不審な人物だと思われるに違いない。


                           間違いない!!

     だが、そんな思いも他人事の様に感じながら、気がついたら夢中になって読み耽っていた。

                       そんな感じで次回へつづく…


                              追伸    


            皆さんホント今更ながらですが、あけましておめでとうございます。


             今年より旧Blog『L'Ecume des jours』は名称変更します。


            何故かというと、『Le film clandestin』という活動に携わる為。


       2月24日にcafe flaneurにて東京フラヌール という自主映画会を企画しています。


         今後も様々な活動情報と共に、些細な手記も綴って行きたい次第です。


                  まあ、そう言う訳でこれからも宜しくお願いします。                           

                                                    Monde

秋刀魚の味 

                年の瀬がもうすぐ迫り、環状線からは渋滞からの苛立ちからなのか


           機械仕掛けの雄叫びも寂しく殻合唱し、木枯らしが淡々と吹き付ける今宵の師走。


                   そんな環状線沿いの家の近所に馴染みの定食屋がある。


             私が渡仏する前からもよく通っており、帰国してからもお世話になった定食屋。


                                 『まつおか』


                     よくこの店へは度々晩飯を喰らいに通ったもんだ。


                       


                   その『まつおか』が本日を持って閉店する事となった。


                            実に30年の歴史である。


             ここの親父さんは、閉店前に行くとよく余り物のおかず等をサービスしてくれて


             私も貧乏学生の頃や金に縁の無かった頃などは良くお世話になったもんだ。


         そんな訳で、この定食屋『まつおか』には過ぎ去りし思い出と愛着を抱いているのだった。


                そこで『まつおか』の最後を見届けようと本日の晩飯を喰らいに行った。          


                 すると、閉店という事もあってか皮肉な事に客の入りがよかった。


                      どうやら馴染みの客などが駆けつけたようだ。


            これも親父さんの30年という結晶が最後の輝きを見せたという事なのだろうか。


          よく考えてみると、この様な『まつおか』の活気の或る光景を久々にみたような気がする。


                      


      親父さんも今日ばかりは何時も以上に忙しそうに炊事場やカウンターを機敏よく立ち振る舞っている。


           そんな光景を見つめていると、可笑しくも切なさも入り混じった妙な感情を抱いた。


                 また、そんな親父さんに声をかけるのも気が引いてしまった。


   数分ほどして親父さんはドアの前にいる私に気づいたのか、顔を向けて微笑みと疲労が入り混じった顔で


                              声をかけてきた。


                         『いらっしゃい。いつもの奴だね』


                  それは私がいつも頼んでいる『ハンバーグ定食』だった。


  だが、今日は『まつおか』での最後の晩餐ということもあり、親父さんのお勧めメニューを頂こうと思った。

                 親父さん曰く『そうかい?!そしたらコレなんかどうだい?!』 

                        

                   そう言う事で本日の晩餐は『秋刀魚定食』に決まった。


             今、思い返してみると親父さんは私の栄養士でもあるのかも知れない。


     その様な訳で美味しく『秋刀魚定食』を喰らいながら、空腹の胃袋へ思い出と共に流し込んだ。

                        


                     上記の写真は喰らった後の秋刀魚の抜け殻


      本来なら喰らう前を写真に収めるのだろうが、この写真の方がリアリズムを感じ取れるだろう。


           最後の夜ということもあり、おかずの量も普段より奮発してくれたのが感じ取れた。


                         秋刀魚の味?!なるほど!!


            シネフィル(映画狂)の私にとって、今日の料理はこの映画を思い浮かべさせる。


                    日本映画界の巨匠『小津 安二郎』監督の作品


LE GOÛT DU SAKÉ (SANMA NO AJI)


     今日の晩餐とストーリーは何の脈絡も無いが、秋刀魚といえば私にとってこの作品が浮かぶのだ。


                      世界の映画ファンを魅了する小津作品。


                 無論、フランスのシネフィル(映画狂)も小津作品を敬愛している。


          どちらかと言うと今日の演出はフランス映画の『パリのレストラン』が適切だろうか。


                     


        今日に至り定食屋『まつおか』の30年の歴史は、あと数時間で幕を閉じようとしている。


         親父さんはこの30年間。この店で様々な人々と出会い手料理を振舞ってきたのだ。


              そこで、親父さんに『何故店を閉じるのか?』と野暮な質問してみた。


                 すると、親父さんは渋い表情でこの様に細々と呟いた。


               『店はまだ続けたいのだが、この店の家主と喧嘩してね・・・』


       その時、私は三国史演戯に出てくる登場人物で黄忠という老いた武将を夢想してしまった。


                 黄忠は三国時代の蜀の五虎大将の一人で弓の名手。


             五虎大将の中でも一番老いているが、蜀の兵士たちはこう称えた。                       

                      

                    


                            『老いて益々盛ん』


              その言葉は正に『まつおか』の親父さんにも当てはまる言葉だろう。


                         親父さんは最後にこう呟いた。


             『この店は今日で終わるが、近いうちにまた店を出そうかと思う』


        『場所はまだ決まってないが、決まったら連絡するよ。本当に今日はありがとう』


    そう言って親父さんはメモ用紙になるような物を引き破いて名前と電話番号を書いて私に渡した。


    私も同じように名前と電話番号を書いて渡し、握手を交わそうとしたら、小麦粉塗れの手と触れた。


          お互いに一瞬含み笑いを堪えながら、親父さんは調理の支度を始めた。


        そして私も歯切れよく『また会いましょう。ごちそうさま』と言いながら店を後にする。


                       帰宅途中、木枯らしが吹き叫ぶ中で


        ほんのりと小麦粉が塗してある右手を見つめながら、私は記憶に刻み込んだのだった。


                                追伸


             数日後、『まつおか』の前を通りかかると下記の張り紙が書かれていた。


                    
        

                                                      Monde

違いがわかる男 

                          Décembre

                 冬の寒さも本格的になってきましたね。


          そんな寒さを忘れさせる為にこんなものを作ってみました。 


             

                          

                         余談ですが

 某有名企業の 『 ダァバダ~、 ダァ~バ、 ダァバダ~、 ダァバダ~♪ 』って言うCM嫌いじゃありません。


              あのシリーズにはこんな人 も出演しているのですね。


         まあ、そんな訳でコレを見て暖かい気持ちになってくれれば我幸いです。


                  それでは良い一日を!!


                                           Monde

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