巴里 10区 夜
あと数日でNOEL(クリスマス)。全世界で各自それぞれの時間を過ごす事だろう。
僕は今日ノルマンディーに向かう。今日も相変わらず優れない天気だ。
そして、出発時刻まで6時間ある。時間も或る事だし、BLOGでも書こうかしらん?!
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或る日の凍りつくような夜。L’ ART BRUT BIS TROでの会話劇。
ジュリアンは、ほろ酔いながらもRの発音を利かせながら、隣で飲んでいた僕に尋ねた。
『日本人は今でもHarakiri(腹切り)するのか?』
ジュリアンはティアトルを主な活動場所にする コメディアン。見た目はロマン・デュリス似で、年齢は30歳。
不意をつかれた質問を耳にしながら、僕はゴロワーズの葉を巻こうとしていた。
するとジュリアンはキャメルを差し出した。
『コレを吸え』
僕は日本語訛りのアクサンで『 Merci 』。そして、『何故そんな質問するの?』と念の為に問う事にした。
ジュリアンは自分で吸っているタバコの煙に咽ながら
『日本の腹切り文化が理解できない。そして、日本人の多くが自殺をする為にインターネット上でサークル
を作っていると言う記事 を読んだんだ。それは本当か?』
* 記事をクリックしてもらえれば或るイタリア人の日本観が書いてあります。日本語訳はココ から。
こんな感じの事を長々とフランス語で言われた。
* ちなみにフランス語で自殺はSuicide(スュイスィド)と言う。
僕は苦笑しながらPICON(ピコン)を飲み、タバコに火を着け、ジュリアンの質問について言葉を探した。
* スピリッツにオレンジ果皮、りんどうの根、砂糖が原料のの苦味酒。麦酒に混ぜて飲むのがポピュラー
『腹切りとは、今の時代は行われないが、現在でも自殺には寛容な国なんだと思う・・・』
そんな感じの言葉が浮かんだので、片言のフランス語ながら答えた。
ジュリアンが僕の言葉を理解したのかは怪しいが、彼は飲みかけのVIN(ワイン)を啜りながら聞いていた。
その姿は自分を慰めるように飲んでいる。
かなり酔っているようだ。視線も虚ろ。酒場で流れる音楽も物悲しげである。
そして僕も、言いたい事が旨く伝わっているのか疑問だった。
この日の夜は、こんな感じでこの話題は終わる事に。
そこで僕は、自宅に帰ってからインターネットで、『自殺』をキーワードに検索してみた。
数日後・・・
また、ジュリアンと僕は二人で飲んだ。
『ジュリアン。日本じゃ1年間にどのぐらい自殺する人がいるか知ってる?』
突然のこの質問に戸惑ったのか、考えるのも億劫らしのか
『何人?』
と、オウム返しで聞いてきた。
僕は一枚の紙を差し出した。インターネットで『自殺 』について調べたものをコピーしたものだった。
* 『自殺』をクリックしてもらえれば世界の自殺者数のデーターが見れます。
『これは日本での自殺者をグラフにしたものだよ。1年間に3万人が自殺するんだよ』
『3万人?信じられない・・・』
ジュリアンは自分の耳を疑ったのか聞きなおした。
『3万人?!』
そして、愚かだと言う感じで、もう一度『3万人!』と呟いた。
ジュリアンはゲップを堪え、『Oh !! Pardon(パルドン)』と言いながら答えた。
『人の死も数式や統計にすれば滑稽だな。レミングのようだ。』
僕らは顔を見合わせ、Piconを飲みながら苦笑した。ふと視界に写った裸電球が目に沁みた。
死とは誰にでも訪れる現象だ。自然に任せた方がいい。
世の中とは不条理なもので、人生を精一杯生きている人々にも訪れる。
戦争、カタストロフ、死に至る病。
その昔、岡本太郎氏は戦争に加担する者へ言った。『殺すな!』と。
岡本氏が生存していたら、自ら死を招く者には、こう言われるだろう『生きろ!』と・・・
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ここまで書き終えて時間を計らった、そろそろ出発時刻に近づいている。
NOELに相応しくない話題だがご勘弁を。それでは皆さん、素晴らしいNOEL(クリスマス)を!!
Monde