女神 | TERRA EXTRANJERA

  女神

                   冷たい小雨が降り注ぐ金曜の夜。


   僕の思考は、ギリシャ神話の神々やエーゲ海をイメージしながらモン・マルトルへ足を向けた。


                  


              何故かというと、ギリシャのDivaの歌声を聴く為に・・・


 会場はPigalle(ピガール)から歩いて約5分の場所。LA CIGALE (ラ・シガール)料金は30ユーロ。

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  Diva(ディーヴァ)=ラテン語の「女神」に由来する言葉で、オペラなどの「歌姫」を指すことが多い。


   本来の意味は光り輝くほどに美しい聖なるもの。神々しいという英語のdivineと同じ語源を持つ。

 

  上記の画像はアメリカ映画界の鬼才 。John Waters(ジョン・ウォーターズ)の映画の常連女優?

                その名はdivine(ディバイン)*実は男性です。

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 話が無駄に反れてしまいましたが、今回紹介したいのは。Angelique ionatos (アンジェリク・イオナトス)

    下記の画像は、彼女の今までリリースしたCDの一部。(公式ホームサイトより画像を拝借)


      


      

            今回、LA CIGALE (ラ・シガール)に入館して驚いたのは

        外観が、ごく普通のコンクリート打ちっぱなしって感じの味気ない建物だが


    室内はバロック建築様式で二階建ての天井桟敷。オペラ座をミニマムにしたような空間。 

   外観と室内のギャップが面白い。調べてみると実は歴史のあるThéâtres(ティアトル)らしい。

               さすがパリ。歴史的建造物が至るところにある。

     客と歌い手の距離が程好い感じだ。この様な空間が客をスペクタクルに誘い込むのだ。

       * LA CIGALE をクリックしてもらえば、どの様な劇場か解ると思います。

          劇場内での写真は禁止。僕は撮りたい思いを堪えながら席に着いた。


           開演して席もだいぶ埋まり、室内のざわめきも最高潮に達した頃。

    劇場の奥からギリシャの女神 『Angelique ionatos (アンジェリク・イオナトス))』 は現れた。

              舞台の中央に、ポツンとスポットライトが彼女に向けられる。

              そして、ギリシャの女神は流暢なフランス語で囁き始め

            ギリシャ語のアルファベットを書いた紙切れに息を吹きかけた。

                   紙吹雪は宙を舞い、客席に降り注ぐ。

   こんなイントロダクションから始まった演奏は、観る者を夢の世界、又はスペクタクルへ誘い込む。

                    女神の歌声は低めの滑らかな音声。


      往年のエディット・ピアフやジュリエット・グレコのような同質のタラント(技能)を感じる。


    そして、驚いた事に彼女はギターまでこなすのだが、これが又素晴らしいテクニックの持ち主。


         曲調によって歌い上げる歌詞は、ギリシャ語、フランス語、スペイン語を駆使。


      ギリシャ語で歌う時、リズム的には奇数拍子(5拍子や7拍子)のメロディー。


         ギリシャ音楽は、アラブ世界の影響を受けているのが頷けた。


   楽器編成は、ヴァイオリン・コントラバス・バンドネオン・ギタール・ドラム(打楽器全般)


   聞き慣れないギリシャ語の歌やメロディーが、不思議と耳を通して心に突き刺ささる。


        もし、彼女の歌声を聴いてみたい方はTV5 をクリックしてもらえれば視聴できます。


           女神の歌を耳にしながら、夢心地な気分で至福の時を過ごした。


        最後に、アンコールでは伴奏無しで、ギリシャ詩人の詩をソロで歌い上げる。


                       そして、幕は閉じた。


   やはり、上質の音楽を聴いたり、スペクタクルを観るのは、心の洗浄にとても必要な事だと感じた。


     劇場を後にする時、ふと、女神がイントロダクションで息を吹きかけた紙が気になった。


       そこで、舞台の最前列を散策したら、ギリシャ語の書かれた紙が落ちている。


    

    僕は無心に、ミレーの 『落穂拾い 』 の如く、その色彩豊かな紙を一枚一枚拾い上げる。

           * 上記、左側の画像はギリシャ語の書かれた紙とチケット。

                     そして、劇場を後にした。


                  Pigalle(ピガール)は大人の歓楽街。


     路地裏では、娼婦らしき年増の女性が挑発的な姿をし、薄闇の中で客引きしていた。


        だが僕は、水溜りに映ったSEXショップの蛍光ネオンに眼を晦ましながら


                女性など気にせずに夢心地気分で歩いた。


          


        何故か、J・J・べネックス監督の『DIVA』という映画が思い浮かんだ。


    それから余談だが、日本ではマス・メディアがやたらと『DIVA』という言葉を連呼する。


本当にその言葉に相応しい、真のDIVAが存在するのだろうか?


             これじゃ言葉の価値を平気で下げるようなものだ。


          そして、その日の夜は、女神の歌声が脳内を駆け巡りながら


      『もう少しでこの街(パリ)から引き揚げるのか!?』と心の中で独り言を呟いた。


                                                          Monde