氷塊
東京で例えると山手線の内側ほどの敷地内であるパリ
その密集された都市には、映画館や美術館などの文化施設が充実している。
パリには約110軒の映画館が存在すると言われている。入館料は3ユーロから8.90ユーロまで様々。
毎週木曜日は国内外の新作映画が10~13本ぐらい上映。
シネマテック・フランセーズ ・文化センター・単館系の映画館は、世界各国の監督特集を組んでくれる。
夏になるとパリの街中で野外映画会 が開催。
また、28の映画祭がフランス各地で催され、世界中の映画ファンが足を運ぶ。
まさに映画を愛する人々にとっては桃源郷のようだ。
或るスイス人は『映画の都・パリ 』についてこのような文章を綴っている。
そこで今回は、数ある映画館の中でも、とてもユニークな映画館を紹介したいと思います。
その名はL'ARCHIPEL パリ10区に存在するこの映画館。
主に封切の映画などを上映。単館ではあるが何がユニークかというと、MUSIQUE & CINEMAなのである。
文字通り映画と音楽を両方楽しめるのだ。
?
『映画とは絵画と音楽と文学が融合された第七藝術だろ?!』
と、思われる方もいるだろう。
だが、MUSIQUE & CINEMAの特集で上映される作品は無声映画に限る。
要は、映画を観ながら生演奏を聴くことが出来るのだ。
* 画像はL'ARCHIPELのホームページより参照。
上記の写真はL'ARCHIPELの模様。先日、Nanouk l'esquimau というシネ・コンサートを鑑賞しました。
内容はNanouk (ナヌォク)というエスキモーの男。又、その家族を通してのドキュメンタリー。
撮影当時、未開の民族であるエスキモーの文化生態を綴っている。1922年アメリカ製作。
この作品は文化人類学的にも貴重な資料。
また、大抵シネ・コンサートなどで好まれる映画には、C・チャップリンやB・キートンのような
判りやすい喜劇映画を上映するのが一般的。
だが、ココでは無声映画のドキュメンタリーなどのマニアックなセレクトなので、映画ファンの心を刺激する。
そして、この日の観客で東洋人は僕一人であった。
さて、内容と感想はと言うと。
銀幕に映る北極の映像を、即興のピアノ演奏が流れるという贅沢な鑑賞である。
凍てつく刹那的な北極の風景。その土地で生きる人間の営み。
時には情熱的に、時には喜劇的に、時には抒情的に、ピアノは映像と同様に流れる如く弾かれた。
きっと、この映像を見た人々は問うであろう。
このような厳しい環境でも、人は生きてゆかなければならないのか?
何故ゆえに?
それは人であるが故に!!
そんな想いを抱きながら、束の間のひと時は幕を閉じた。
上映終了後、映画館内は大きな拍手に包まれた。それは映画への賛辞であり、伴奏者への賛辞の拍手。
そして観客は余韻に浸りながら席を起った。
だがその後、僕は悲しい経験をする。
年齢は40~50代の、いかにも典型的なフランス人という風貌の男性
明らかに僕を指して『エスキモー』と囁いて失笑いた。確かに彼らから見れば東洋人の分別は難いだろう。
しかし、あの笑いは明らかに東洋人を蔑ました類の笑いだった。
フランス人である彼らの聖域を侵してしまったからか?
別にエスキモーに間違えられたからって怒りを感じた訳ではい。
その時はどちらかと言うと、怒りよりも悲しみの方が増したと思う。
『東洋人軽視』
これが許せなかったのだ。
ヨーロッパには、この概念が結構根強く残っている。
だが、全ての人々がそのような人種差別主義(Racisum)を抱いている訳では無い。
一部の人種差別主義者(Raciste)だけであるし、そう願いたい!!
その時、この映画のタイトル(Le Mepris=軽蔑)が脳裏に浮かんだ。
それにしても、せっかく気持ち良い想いに浸っていたのに・・・
だが、そんな嫌な想いも歩いているうちに忘れてしまった。
そこが我ながら良い点だ。そうじゃないと異国の地ではやっていけないのです(笑)
Monde