蛞蝓 | TERRA EXTRANJERA

  蛞蝓

                       今宵は梅雨濁日和


                  こんな時期は毎朝の出勤が憂鬱になる。


何故かと言うと、地下を走る超合金で出来た箱の乗り物に、肉の塊は詰め込まれ揺られながらの移動。


                       本当にうんざりする。


          ちなみにこの乗り物にはTokyuuと言うネームプレートが掲げてある。


                  別名称は『痴漢電車』と言うらしい。


            その様な訳で、私は日々そんな嫌な気分を紛らわす為


      通勤移動時間の習慣として、少し湿っぽく黴臭い読みかけの書物を片手に


                     読むという行為に没頭する。


  不快指数90%の毎朝であるが、残りの愉快指数10パーセントは書物の世界で誤魔化している。


   また痴漢に間違えられないようにカモフラージュしている訳ではない事を言い添えておきたい。


       それにしても、車内での人々の表情は陰気臭い。まるで蛞蝓(ナメクジ)のようだ。


 きっと、この疲れた人達に塩を撒いたら溶け出すかもしれない。そんなくだらない夢想をするのも度々。


                         そんなある日の朝


             いつもの様に書物を読んでいたら、このような言葉に遭遇した。


 


                       フカカイナ ビトク ノ コトバ


         何故か片仮名でこの文章の一節について、様々なイメージを想い更けていたら


                 いつも降りるはずの最寄駅を乗り過ごしてしまった。


       しょうがないので電車の中吊り広告でも眺めて平静を装っている己を嘲け笑いながら


              ドアの近くのポールの所に寄りかかって書物の続きを読んだ。 


                           まあ兎に角 


            まったくもって朝から『不可解な美徳の言葉』に翻弄されてしまったが


     その時の私にとって、遅刻した事よりもその『言葉』について考えることが大切な事なのだ。


                                                             Monde