東京フラヌール | TERRA EXTRANJERA

東京フラヌール

                            前回の続きより・・・


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               それは線香花火が火花の放物線を描きながらスパークするように


                      ページを捲ったと言ったらよいだろうか。


            作品の世界観に浸れる瞬間とは僕にとって例えるならこの様な心境なのだ


                     


             彼のスケッチする東京は、我々日本人が日常に見る東京の断片であり


                     台詞や色彩がとても生気を帯びている。


          きっとボワレ氏は現実世界を凝視した傍観者的視点で物事を観察しているのだろう。


          また、異邦人のフィルターを通して描かれた東京がとても磨りガラス越しに見えるので


                我々日本人の日常の風俗、習慣、特性を再認識した。



          


           彼の描く世界観が現実だと思えたら、現実も結構悪くないものだと思ったりもした。


                 僕の知っている限りの従来BD作家と比較してみると


           どうしてもビジュアル重視のデッサンとSF的なスペクタクルを抱かせるのだが


            ボワレ氏の視点は普偏性であり、日常を非スペクタクルとして描いている。


                 それは外的世界と内的世界の温度差なのだろうか?


 僕の好みからすると後者だろう。だから、漫画を読むということを意識せずに淡々とページを捲れるのだろう。


                   そう言えば、この経験は以前にも経験した事がある。


        僕の愛読する日本の漫画家だと、つげ義春氏と同類の感性の持ち主なのだろう。


                      リアリズムとリリシズムを抱かせる作品。


           


   それに言い付け加えると、なんと例えたらよいか旨く伝えられないが異邦人の視線が東京と言う都市に


                    浮遊感を抱かせるとでも言うべきだろうか。


           映画に例えるならS・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』のように…


                    


         それにもう一つ付け加えると、フランス映画の系譜を感じさせるからではないだろうか。


         それは、また別の言葉で表現すると『自然作家主義』と言ってもいいのだろうか。


      僕が連想するフランス映画だとヌーベル・バーグの頃だったら E・ロメール監督の作品群だろう。


        『六つの教訓的物語』6本、『喜劇とことわざ』、6本『四季の物語』4本などが代表作だ。


         個人的には『緑の閃光』、『夏物語』、『モンソーのパン屋の娘』がお気に入りだが


             F・ボアレ氏の作品は『モード家の一夜』が伝わりやすいだろうか。



     
                     
 


   恋人同士または男と女の些細な会話などは正にF・ボアレ氏のヌーベル漫画から正に感じ取れる一面だ。


         ちなみにヌーベル・バーグ以降だとS・クラピッシュ監督の『猫が行方不明』だろうか。


           多少、喜劇的要素が強すぎるが作品のモチーフとしては日常の些細な出来事。


    そう言えばF・ボアレ氏の『恋愛漫画が出来るまで』に付属している『DEMI-TOUR(半分旅行)』などは


                     映画のシナリオとして完成度が高い。


           その内容はと言うと、ある男と女の『偶然の一致』をテーマに物語は語られる。


          これがまた面白い構成で、一つの漫画に二つの時間軸を交差した実験的な作品。


                       その様にして氏の作品を読むと


         特に僕のような映画狂にとっては一つのフランス映画を見終わった気分に浸らせる。


              それはとても僕の中で心地の良いワルツを聴くようなものである。


         だから、こんなにも自分にフィットする漫画。正しくはヌーベル漫画なのだろう。


              まだ、この2冊しか知らないが他の作品も読んでみたい。


            それは、また僕に新たな趣味が一つ増えたことを意味していた。


   気が付けば時刻はAM7:55を差している。いい加減こんな不規則な生活を本当は直したいのだが…


        カーテンの隙間からは、青味を帯びた光が慎ましく埃っぽい部屋に差し込んでいる。


                   埃は煌めきを帯びながら静かに舞っていた。


          そう言えば気が付かなかったが、振り子時計が数回時を告げていたようだ。


                    『眼も霞んできたので床に就こうか』


           そんな思いに駆られながら草臥れたソファーに草臥れた体を沈めた。


              しばらくする内に夢の中で僕はしみったれたの酒場にいた。


           カウンター越しに隣では白髪に髭を蓄えた老人が麦酒を煽っていた。


     何処かで見覚えのある顔だった。あれは誰かの小説の著者の肖像写真だったような?!


          すると、老人は麦酒の杯を煽りながら僕に細々とした英語でこう呟いた。


          『"Truth is more of a stranger than fiction."(真実は小説より奇なり)』と…


                                                       Monde

  

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                              告知


      この度フレデリック・ボワレさんをゲストとしてお呼びするトークショー&映画上映会を開催!!

                            2/24(土)
                  le film clandestin上映会「東京 フラヌール」
                          16:00~上映会
               上映作品:「モード家の一夜」(エリック・ロメール監督)
                         ※DVD・日本語字幕付き
                          18:00~トークショー
                ゲスト:フレデリック・ボワレ  http://www.boilet.net/
                           料金:¥2,000
                ※上映会+トークショー+1drink込のお値段です
                  会場:cafe flaneur  http://www.flaneur.co.jp/
                 東京都渋谷区神宮前3-41-3/03-3796-8200

                   メールマガジン:film@someonesgarden.com
                          

       同日発行するフリーマガジン「someone's gaden」にもボワレさんのインタビュー掲載します。


       とっても気さくな良い方でした。ぜひご興味のある方はご連絡ください!!


                                                      le film clandestin