TERRA EXTRANJERA -12ページ目
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Salaud !!

 人間観察を好む人がいる。どんな些細なことでも見逃さないように注意深く、その人の癖・特徴・発言などを資料にして、その人の生い立ちや、生き様などを想像する。僕も良く観察する一人だ。


ある日こんな出来事に遭遇した。それはバスの中での出来事だった。車内は通勤時間も過ぎて客もまばらであった。その時僕の後ろの席で大きな声が響いた。中年のムッシュと初老のマダムが口論をしているようだ。まあFranceではよく見る光景なのでその時はなんとも思わず聞き耳立てないでいた。だが、あまりにも大声なので気になり耳を傾けた。


その内容はあまりにも早口のフランス語なので聞き取るのも難しかった。どうも中年のムッシュが不本意な事をしたらしい。経緯がどの様なものなのかは解らずじまいだったが様子を見ていた。その初老の女性は傘を振り回しながら「エゴイスト!!ファシスト!!」と罵しり、最後に「Salaud!!(ゲス野朗)」と止めを刺した。


こんな言葉はCINEMAの中でしか聞いたことなく、生で「Salaud」を聞いたのは初めてだった。流石にその男性も口論では手に負えないと思ったのか次の停留所で降りた。だが、ここからがこの喜劇の見せ所だった。そのムッシュはなんとバスの窓越しに初老のマダムに向かってナチス式の敬礼をしたのであった。そのムッシュの表情たるや見ている観客までも不愉快にさせる笑顔だった。マダムは金切り声を上げ窓越しに傘を振り回そうとしていたが、それを見かねた周りの人達もマダムをなだめ幕は閉じた。


 一部の人達は含み笑いや顔を両手で多い笑いをこらえていた。この初老のマダムもこんなに達者に怒りを吹き上げるのだから、まだまだ長生きできるだろう。そしてナチス式の敬礼をしたムッシュもかなりユーモアの持ち主だ。「ファシストと言われたから敬礼したのか?あるいはナチス崇拝者だったのか?」そこは謎だが、観客は大いに楽しんだろう。僕もその一人だった。バルザックが人間喜劇なる小説を書いたのも頷ける。ネタが豊富なのだから。そして人間喜劇の幕はいつでも突然開かれるだろう・・・

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KIM・KI・DOKという男

 映画の都Paris。ここ最近日本では韓流なるものが流行しているみたいだが、去年のカンヌ映画祭も韓国人監督のオールド・ボーイがグランプリに輝いた。まあこれは偶然が重なっているのだろう。去年の審査員が奇才クエンティ-ン・タランティ-ノの影響もあるだろうが・・・


 Parisでも、つい最近まで或る韓国人監督の特集をやっていた。その名は。KIM・KI・DOK 日本でもキム・ギドクとして一部の映画ファンには名が知れているだろうが。彼の映画はあまり一般受けするような映画じゃない。韓国でも映画評論家には手厳しい批評をされているらしい。


 韓流という言葉がまだ聞かれない頃、僕はこの監督の『魚と寝る女』という映画を日本に住んでいた頃、ビデオで見たが、透明感ある映像と奇抜なシナリオが妙に癖のある監督だと思うだけでそこまでマークしていなかったが、Parisでさすがに監督週間までやるような監督であればマークする価値はあるだろうと思い、公開している映画を何本か鑑賞した。考えてみると始めて映画料金を払い、韓国映画を観たのであった。ちなみにParisの映画料金は大人一枚8・50ユーロ日本円にして1300円位だろう。余談だが僕はいつもMK2という配給会社の三回券を購入している。それだと1回の映画を鑑賞するのに6・5ユーロで観れるのだ。


 話を戻すがキム・ギドクの映画は人間の心に潜む陰を焦点に作り上げていると思う。まあこれは過去に様々な監督が表現主体として取り上げているテーマだが、キム・ギドクにしか作れない独特のスタイルを持っていると思う。泥臭さい映像の中に突然、透明感のある映像を入れるとか、セオリ-を無視したシナリオに編集、会話主体じゃなくて演技で見せる。そして良く使われるピアノソロの伴奏。イメージで志向する監督だと思った。フランスでも彼の新作公開日には席を埋め尽くすほどファンの心を魅了している。


                       


 そう言えば4月13日から彼の新作「LOCARAIRES」が公開している。感想は批評家じゃないので差し控えるが僕は既に鑑賞し好きな部類の映画だった。日本語の直訳は「借家人」である。近いうち日本公開されるだろう。芸術に国籍を問わないParis。そこが僕のParis愛する理由の一つだ 。

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神の不在?

 前回、職場のスリランカ人の事を書いたが、今回は彼ら国の事を書きたいと思う。皆さんも既に知っていると思うが、去年の12月26日にスマトラ沖で起きたカタストロフの二次災害で大津波が発生し、スリランカでは少なくとも46,000人が死亡した。職場のスリランカ人達は、カタストロフの翌日とても悲壮な顔つきをしていた。


 或る同僚の一人パスカルが言った。「お前、昨日TVを見たか?」何も知らない僕は「いや、見てないよ。昨日はベルギーの友人の家で、Noel(クリスマス)を祝ったんだ。なんで?君は?」彼は言う「お前知らないのか?俺の国でとんでもないカタストロフが起きたんだ!信じられない!!」いまいちその時はピンとこなかったが、その時はなんとなく彼を憐れんだ。


 その夜、TVを見ると、そこには非現実なる光景が写っていた。そしてTVが「TUNAMI、TUNAMI」と日本語に似た言葉を連呼する。日本語が語源のTNAMIとは、世界共通語らしい。これでパスカルの言った事が理解できた。僕がベルギーで楽しんでいた時に、スマトラ沖では信じられない事が起きていたのだ。僕は職場のスリランカ人達を今度は心から憐れんだ。そして日本に住んでいたら、こんな身近にスリランカ人と接さないだろう。この問題を、凄く身近に感じる事が出来るのもParisだからかもしれない。


 今回はNPOのBlogに書いてある記事みたいな文章になってしまったが、これが僕の日常の一部であることを判ってほしい。この世界は神の不在なのかもしれない・・・

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見るまえに跳べ !!

 それは幼少の頃に見た旅番組、(あれは確か、兼高かおる世界の旅)僕が初めて外国を意識した切欠である。


 子供心にどうして皮膚の色、堀の深さ、目の色、民族衣装、文化 ets… すべてが疑問だらけであり、その頃は理解不能だったが、僕はその時決意した。童謡の歌「海」の歌詞で(・・・行ってみたいな他所の国)を歌いながら「いつか外国に行き、住みたいな」と・・・


 それから月日は立ち幾度か旅行はしたが、住むには莫大な費用も掛かり、語学は苦手な方、仕事はどうする?と非現実な事が分重なり途方に耽る。*ワーキングホリデーという手段は、性に合わないし面倒なので除外した。 だがある時、一冊の本に啓示される。その本にはこの様な一節が書いてあった。


Look if you like , bot you will have to leop !!

(見たけりゃ見なさい、けれどもあんたは飛ばなきゃいけない!!)


  その言葉は僕の心を揺るがした。そして後に人生を変える言葉になるとは。 後に僕は決意した。あの幼少の頃の夢を今こそ叶えようと。そして僕は自由・平等・博愛の国Franceへ行く決意を抱く。

*何故Franceなのか?は、近いうちに書きたいと思う。


Franceに不法滞在者として渡仏する前日に友人から貰った手紙にこんな事が書いてあった。


無謀なことを、無謀だと知らずにやってのける人間。

無謀なことを、無謀だと知りながらもやってしまう人間。

無謀なことを、無謀だと知りやらぬ人間。


 そして僕が選択したのは、無謀だと知りなららもやってしまう人間。それは、あの言葉がもたらした選択であったのかもしれないと思うのた。


Look if you like , bot you will have to leop !!

(見たけりゃ見なさい、けれどもあんたは飛ばなきゃいけない!!)

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l’Etranger

 Parisで生活していると、様々な国の人と出会う。それもFranceならではの醍醐味だ。


 現在、僕の働いている店も実に多国籍なスタッフがそろっている。 まず、グランパトロン・パトロンはユダヤ人とフランス人の共同経営。お店の売り子はフランス人3人にマダガスカル人にコソボ人そしてベトナム人パティスリーはフランス人1人にエチオピア人のシェフそしてスリランカ人。(パティスリー=ケーキ・お菓子部門)パンは日本人の僕と後はすべてスリランカ3人。 共通の語源はもちろんフランス語である。


 この様に毎日が雑踏とした、バザールの熱気に包まれ、スリランカ人の皮膚に沁みこんだカレーの匂いがする。 Parisの華やかなイメージ。それは映画・マスコミが作り上げた虚栄。その裏側は階級に妨げられた人々が存在している。実際、Franceでは移民の存在は、かなり深刻な問題である。そして、この国は、外国人の労働力が必要不可欠なのであると感じるのだ。 Etrangerが生きる町。僕は、そんな裏側のParisもFranceを愛する理由の一つなのだ。

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